確定申告相談会場
雪のせいで超空いてる。暇だ。
相談者
こんにちはー!暇そうですね!相談してもいいですか?
やってません。
相談者
いやいやいや、その派手なジャンパー着てるんだからどうみても相談担当の職員さんでしょ!
うるせえよ。
相談者
ぼく、こう見えて会社を経営してるんですよー。不動産クラウドファンディングの会社(以下F社)。まあ、職員さんに言っても理解してもらえないだろうけど、なんかイケてるビジネスです。
ところで昨年、不動産の会社を株式を現物出資して資産管理会社(以下S社)を設立したんです。この場合、ぼくにどんな課税関係が発生するのかなーって思って、暇だから相談会場に来てみました。
税理士に相談してください。
相談者
まあ、そう言わないで。どうせ暇じゃないですか。以下事実関係です。
・私はF社の株式を100%保有していた。
・私は保有するF社株式のすべてを現物出資してS社を設立した。
・私は現在S社株式を100%保有している。
・私はF社を設立するにあたって現金2千万円を出資した。
あなたには譲渡所得が発生しますね。株式は譲渡所得の基因となる資産に含まれます。また現物出資は譲渡に該当します。
相談者
なるほど。では譲渡収入はどのように測定すればよいですか?
対価として受け入れたS社株式の評価額をもって譲渡収入とするのが原則でしょうね。
しかし、S社株式の評価額と譲渡資産であるF社の評価額を比較してS社株式の評価額がF社株式の評価額の2分の1に満たない場合はF社株式の時価で譲渡したものとみなされます(所法59①二、所令169)。
相談者
F社株式はどのように評価する感じですか?
所基通59-6により評価します。評価方式を決定するためには、あなたが同族株主等に該当するか否かを判定する必要があります。あなたはF社株式の売主なので取引前の状態で判定します。あなたはF社株式を100%保有していたので、あなたは同族株主等に該当し、配当還元方式により評価することはできません。
相談者
S社株主ついてはどう評価しますか?
定めはありませんが、実務上は評価通達に基づいて評価します。評価方式を決定するためには、あなたが同族株主等に該当するか否かを判定する必要があります。あなたはS社株式の買主なので評価通達により、取引後の状態で判定します。あなたはS社株式を100%保有するので、あなたは同族株主等に該当し、配当還元方式により評価することはできません。
相談者
原則的評価を行う場合の資産負債についてはどの時点を採用しますか?
評価通達185では「課税時期における」資産および負債に基づき純資産額を求めることとされています。今回の場合の「課税時期」とは現物出資が行われた時点です。
したがって、当該取引後のS社の貸借対照表、すなわち資産にF社株式が計上され純資産に払込資本金が計上されている状態の貸借対照表に基づきS社の純資産額を評価するのが相当と考えます。
相談者
そうすると純資産額ベースのS社株式の評価額は、F社株式の評価額と同等になるはずですね。S社はどのような価額でF社株式を受け入れるんでしょうか?
法基通9-1-14により評価します。所基通59-6と異なり、同通達に同族株主等の判定時期についての記述はありません。しかし熊本地裁H28.9.21では、株式取得後の買主の議決権に基づき判断するのが相当である旨判示されています。したがって、S社は取引後F社株式を100%保有するので、S社は同族株主等に該当し、配当還元方式により評価することはできません。
相談者
そうすると、S社の純資産額はF社株式を原則評価した価額と同等になりますね。そうすると私の譲渡資産であるF社株式の評価額と対価であるS社株式の評価額は同等になることから、みなし譲渡にはならないということですね。
そうですね。
相談者
譲渡所得はS社株式評価額(=F社原則評価額)を譲渡収入として、そこからF社設立時の払込出資金2千万円を取得費として控除することで算出されますね。
I couldn't agree more.
相談者
ありがとうございました。暇な職員さんがいて助かりました。
さようなら。